菅沼 太久未さん

世界に誇る精密部品メーカー。
一貫生産体制のもと、
手作業で機械の限界に挑む。
株式会社片桐製作所(上山市)

県内有数の精密部品メーカーである(株)片桐製作所。ここでつくられる部品は、国内の全自動車メーカーの車に搭載されています。2013年に入社した菅沼太久未さんは、精密性が必要とされる研磨業務を担当。日々、ミクロンの世界に挑み続ける、若手のエースです。

菅沼 太久未さん

プロフィール
菅沼 太久未 さん
1994(平成6)年生まれ
山形県上山市出身
山形県立上山明新館高校普通科卒業
2013年4月 (株)片桐製作所入社

入社の動機、きっかけは?

高校卒業後は地元で就職しようと思っていました。どの職種にしようか考えたときに、営業やサービス業には興味が持てず、「製造業なら自分に合うかもしれない」と地元の製造会社を調べたのが、当社を知ったきっかけです。小さい時から黙々と作業をするのが好きで、菓子店を営む父の手伝いをしていたことも「ものづくり」の仕事を選ぶ理由の一つになったと思います。

具体的な仕事内容を教えてください。

部品をつくる際に使用する金型の「ラップ」を担当しています。ラップというのは研磨のこと。パンチ、ダイスと呼ばれる大きさや形状の異なる金型を鏡面仕上げする最終段階の作業です。金型の寿命の長さもこの作業で決まります。金型の穴などを磨く際に許容される寸法の誤差(公差)はマイクロメートル単位。私が関わる製品で最も厳しい公差は0.001マイクロメートル。製品によって、100分の1、1000分の1と公差が決まっているので、極力ゼロに近づけていく作業はとても繊細で、技術力が求められます。こうした一連の作業はコンピュータ制御された機械で行うイメージがあるかもしれませんが、当社では手で加工しています。少しでも力を入れ過ぎると穴が大きくなったり、変形して使えなくなったりするので少しも気が抜けません。最終的な仕上げで頼りになるのは機械ではなく、人の手。担当して7年になりますが、この仕事にゴールはなく常にスキルアップを目指す毎日です。

株式会社片桐製作所
株式会社片桐製作所

ラップ板に金型を取り付けて回しながら、ラップ棒などの工具を使って円の内側を研磨していきます。

仕事をするうえで大切にしていることはなんですか?

手作業なのでうまくいかないこともありますが、その失敗を引きずらないようにしています。表には出ませんが、私たちの仕事は人の命を預かることに直結しています。日常的に作業を繰り返していると、そうした意識が薄れてしまうことにもなりかねないので、実際に自分がつくった金型を使用してつくられた部品が搭載されている車を見たりしながら気持ちをリセットしています。

入社して苦労することはありませんでしたか?

最初は知識も技術もなく真っさらの状態で入社しましたが、不安はありませんでした。大学、専門学校で理系だったとしても、その会社での仕事は全員がゼロからのスタートですから。専門的な知識がなかった分、何事もストレートに吸収できたのかもしれません。意欲を持って取り組むことがいちばん大事だと思います。

株式会社片桐製作所
疑問に思ったことは、すぐに上司や先輩に相談するようにしています。

仕事に対する誇りはどんなところに感じますか?

当社の技術力の高さ。誰でもできる仕事ではないところに誇りを感じています。手で加工する仕事はなかなか人に伝えるのが難しく、一人ひとりの経験値と感覚が大事になってきます。作業そのものは2年くらいで覚えられると思いますが、やればやるほど課題が見えてきて、「こうすればもっとよくなるかもしれない」という思いも強くなっていきます。

仕事のやりがいを教えてください。

お客さんや当社の営業担当から「菅沼くんがつくってくれた金型、寿命持っているよ」と、直接言ってもらえたときはモチベーションが上がりますね。最後の仕上げ工程なので、でき次第で信頼につながるので責任はありますが、やりがいを感じます。

今後やってみたい仕事、目標は?

直近の目標は機械検査技能士の1級を取得すること。今の仕事をするために必要な資格はありませんが、スキルアップのため自主的に挑戦しています。将来の目標は同じ業種の中で、県内ナンバーワンの技術者になることです。

ものづくりがしたい人たちにメッセージをお願いします。

ものづくりは、根気強く続けていけばいくほどできることが増えてくる仕事なので、やってみて自分のイメージと違うと思っても投げ出さないこと。途中で諦めるのはもったいないです。上司や先輩に聞いたり、意欲を持って自ら動く。それが仕事を覚えることにつながっていくと思います。

(2023/2/16取材)


株式会社片桐製作所

主に自動車部品を生産する「精密部品メーカー」。自動車部品は国内全自動車メーカーに加え、グローバルに搭載されている。また、社内で扱う砥石、金型、超硬合金素材の開発・製造も自社で行うなど一貫したシステムを強みに、完全オーダーメイドでの販売も行っている。近年は自社開発製品にも力を入れ、ロボット・生活機器など様々な分野へ事業を展開している。創業から75周年を迎え、歴史に育まれた技術力で、これまでも、これからも『人々の安心安全な生活に役立つものづくり』をモットーに成長し続けていく。

株式会社片桐製作所
代表者:代表取締役社長  片桐 鉄哉
設立:1947年
従業員数:236名(2023年1月現在)
事業内容:精密部品製造、超砥粒工具/金型/超硬合金製造・販売
所在地:(本社)山形県上山市金谷字鼠谷地1453
    (山形事業所)山形県山形市蔵王松ヶ丘2-1-5
TEL:(本社) 023-679-2201
FAX:(本社) 023-679-2413
URL:http://www.katagiri.co.jp

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