森谷俊和さん

【プロフィール】
森谷 俊和(もりや としかず)さん
1972年生まれ。東根市出身。
山形県立東根工業高等学校電気科を卒業後、1990年に東北パイオニア株式会社入社。県内工場や海外工場で製造管理から生産管理までを経験し、2022年より株式会社ソアー(旧東北パイオニア株式会社米沢工場)にて製造部門の管理を担っている。
趣味は温泉巡り、旅行。

東北パイオニアで培った 製造管理の俯瞰的知見
私は高校では電気関係を学び、卒業後、オーディオ製品に興味があり東北パイオニアの天童工場に入社しました。それから現在まで、ずっと製造に携わっています。
最初に配属された製造課では、「メカトロニクス(機械に電子回路による高度な制御を施した多機能・高性能な製品の開発)」に携わり、カーステレオのメカニズムの製造管理から生産管理までを担いました。その後、海外赴任を経験し、2,000~3,000人規模の従業員がいるタイ工場の製造部門でGeneral Managerとして「世界一の高品質・高効率の生産」をスローガンに組立工程や作業環境の改善に取り組みました。
2013年に天童工場へ戻り、その8年後、米沢工場(現在の株式会社ソアー)に異動して新規事業「ものづくりソリューション」の製造課を任されることになりました。
天童工場やタイへの赴任で、製造に関する技術的な面だけでなく、予算の考え方や材料の調達、生産ラインの管理、作業環境の整備などに従事し、製造に関わる全体的な考え方を知ることができ、それが現在の仕事の礎になっていると思います。

教育をスタンダード化して快適な作業環境を
私たち製造課は、お客様から依頼を受け開発設計された製品を「形にする」工程を担っています。
製品は小型ディスプレイ搭載製品から医療機器の認証を受けた大型装置など多岐にわたります。

ブリージングデバイス
歩行領域EVの電装ユニット
ダクト内遠隔監視センサーユニット

私たちは「人がものを作る」ということを念頭に、「教育による人づくり」と「ものづくりの標準化」に重点を置いています。「人づくり」は作業方法だけではなく、ものづくりに関しての基本的な考え方も教育に含めることで理解を深めてもらえるようにしています。
また、一人ひとりの技術力はスキルマップを使って適正に評価し、最適な役割を担ってもらうことで、最大限活躍してもらえるよう配慮しています。作業動画を使った教育も導入しており、製品の取り扱い方や作業タイミングを分かりやすく伝えることで、理解度を向上させることができています。
「ものづくりの標準化」は4つのキーワード(ダストレス・ストレスレス・不安定作業レス・整然と流れるライン)を盛り込んだ「ものづくりスタンダード」を策定し、部品と工具の配置の最適化など100項目の条件を定義しています。その条件を満たすように作業環境や作業動線の改善を積み重ねることで、ストレスや不安定な要素を排除し、人と製品に快適な製造環境を目指しています。

作業動画でノウハウ理解度向上
ものづくりスタンダードの教育

スタンダード作業環境を展示していつでも体験できる

大型装置の生産は数千点の部品を組み合わせる工程のため、一般的には経験と高い専門性が求められます。そこで私たちは3Dアニメーションを使った作業仕様書を導入し、経験が少ない方でも専門的な作業ができるような取り組みも行っています。また、2名チームを構成し、複数台を平行生産しながらタブレット端末を使って組立状況を相互にチェックする方法を標準化しています。

3Dアニメーションを見ながら組立
2人1チームで相互チェックを欠かさない

自作の管理システムと目で見る管理(Visual Management)で徹底的に効率化を図る
新しい製品の製造依頼が来たら、まずは生産技術課に要求事項を確認しながら製品に合った最適な製造工程を「ものづくりスタンダード」をベースに生産環境をつくり上げます。実際に走り出した製造管理については、自作の実績管理システムを構築しており、実績/進捗/目標対比の状況をリアルタイムに把握できるようにしています。実績の入力をシンプルにすることで、朝礼で前日の実績を示せるだけでなく、毎月1日目には前月の月次分析やトレンドを報告することができるようになりました。各生産ラインの前にVMボードも設置して必要な管理内容を「見える化」することでミス無く運用することができます。また、製品を作るために必要な部品管理も「見える化」を行っています。ひとつの製品を作るためには数百~数千の部品が必要になりますが、どこにいくらあるのかを常に把握する事ができ、無駄を省くことで全体の流れを効率的に管理する事ができます。

報連相と5Sの精神で無駄のないオペレーションを築く
今の仕事に従事して特に思うことは、2つあります。
ひとつは、やはり「報連相」が大事だということ。問題が起きたり変だなと感じたりした時に、しっかりと5W1Hで正しく伝えらもらうことが何より大切です。当社では「Bad News First」(悪い情報は先に皆で共有しよう)ということを重視しているのですが、何かミスをした時にすぐに報告できるようにするためには、「話しても大丈夫」という信頼関係や安心感がなければできません。そのため、日々の声がけや話し合いでそういった関係性を築き続けることが大事だと感じています。
もうひとつは、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)。これは作業環境だけでなく、仕事そのものにも通ずる考えだと思います。誰が見てもわかるように環境を整えておくこと。資料のファイリングやファイルホルダなどもルールを統一して整備することで、だれでも間違えないで無駄をなくす事ができます。
これからは、パソコン操作をオートメーションでおこなうアプリの使い方を習得して現在の管理システムをさらに改良していきたいと考えています。更に業務効率を上げ、人づくりとものづくりをしていきます。
(2025/9/11取材)




株式会社ソアー
株式会社ソアー

株式会社ソアー

1981年にパイオニア100%子会社である東北パイオニアの米沢事業所としてスタートし、音響メーカーとして音づくり・ものづくりを追求してきた。1997年には世界初の有機ELディスプレイの量産化に成功。2022年に株式会社ソアーとして新たな歩みを始め、有機EL事業・ものづくりソリューション事業を両輪として価値あるものづくりを目指す。2024年、サクサグループの一員となる。

株式会社ソアー
代表者:代表取締役 兼 社長執行役員 八巻 雅敏
設立:2022年1月14日
従業員数:200名(2025年4月1日時点)
事業内容:
・有機ELデバイス(ディスプレイ/特殊光源等)の開発・製造・販売
・開発・製造受託サービス(ODM/EMS)の提供
所在地:〒992-1128 山形県米沢市八幡原四丁目3146-7
TEL:0238-28-1211
URL:https://www.soar-tech.co.jp/
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