福祉から生まれる質の高いものづくり
(新庄市)
三浦美紀(ミウラミキ)さん
新庄市出身。短大卒業後、県外の金融機関に就職するも、福祉の仕事に興味を持ち専門学校に通って資格を取得。平成22年に山形へUターンし、ユニオンソーシャルシステムに入社。勤続10年。製造拠点事業所の管理者として勤務。
高田優季(タカダユウキ)さん
新庄市出身。高校卒業後、介護福祉士として福祉関係の会社に就職。結婚後、子育てとの両立ができる働き方をしたいと考え転職。平成25年、ユニオンソーシャルに入社。勤続7年。製造拠点事業所のサービス管理責任者として勤務。
入社のきっかけを教えて下さい。
- 三浦
- 以前は県外で働いていたのですが、山形に戻って福祉の仕事をしたいと思っていたところ、障がい福祉サービスやものづくりをしているこの会社を見つけました。面接に来た時に、使い古してボロボロになった野球ボールが、技術と人の手によって新品同様に生まれ変わるのを見て、自分も技術者としてぜひその仲間に加わりたいと思いました。
- 高田
- 私は以前、高齢者介護施設で働いていたのですが、その職務経験生かして新しい経験を積みたいと考えていた時に、障がい者がものづくりを通じて自立を応援する仕事があると知り、役に立ちたいと思って入社しました。また、結婚・出産を機に働き方を変えたいと思い、交代制勤務ではなく土日休みの職場を希望していたというのもこの会社を選んだ理由の一つです。
仕事内容を教えて下さい。
- 三浦
- 私は、製造拠点事業所の管理者として、知的障がい、精神障がい、身体障がいなどさまざまな障がいを持った方たちに、硬式野球ボール製造に関する知識や能力を身につけてもらうための訓練を提供しています。
硬式野球ボールの製造工程には、皮はぎ作業、糸巻作業、縫い作業、仕上げ作業などの工程がありますが、一人ひとりの障がい特性を把握し、個々の得意とする作業を見定めて作業分担を行っています。 - 高田
- 私は、製造拠点事業所のサービス管理責任者として、障がいのある従業員の働き方についての支援計画の策定や野球ボールづくりに関する技術指導のほか、野球ボールにオリジナルの文字やデザインを刺繍するため、画像の最適化処理と、コンピュータミシンへデータ送る業務を行っています。また、新しい業務を始める際には作業内容や流れを考え、従業員にわかりやすく伝えるのも私の仕事です。
大変なところはどんなところですか?
- 三浦
- 従業員の方はそれぞれ異なる障がいを持っていて、手が不自由な方もいれば、精神に障がいをお持ちの方もいらっしゃいます。日々、一人ひとりと話をしながらどんなことが得意なのか、苦手なのかを見極めるのが一番難しいですね。
障がいのある方が野球ボールの製造を通して自信をつけたり、自分では気づかなかった力に気づいたり、それぞれがスキルアップできるように努めています。 - 高田
- やはり、一度やっただけでは技術を取得することはできませんし、何度やってもなかなかできないこともあります。でも、そこで「苦手だから」「障がいがあるから」とあきらめずに、最後までやりきるというのが一番難しいですね。私も途中で心がくじけそうになることもありますが、できた時の喜びはとても大きいので、本人もまわりもあきらめずに取り組むことが大切だと思います。
心がけていることはありますか?
- 三浦
- 従業員がどんなことでも相談できるような雰囲気づくりを心がけています。
日々、接する中で悩みや目標を汲み取ることができるように、一人ひとりとコミュニケーションを積み重ねていくことが大切ですね。従業員の方は、ちょっとしたことがきっかけで落ち込んだりすることもありますし、精神状態が製品の仕上がりにも影響してしまうので、作業がはかどらない時は「何かあった?」と話しかけたり、気持ちを切り替えてボールづくりに集中できる環境づくりをしています。
クオリティを保つためには、従業員の表情や隠れている小さな想いなど、日々の変化に気づいてフォローアップしていくことも私の大切な仕事だと思っています。 - 高田
- 従業員の障がいの特性はそれぞれ違うので、難しい言葉のほうが伝わる方もいれば、かみ砕いた表現のほうが伝わる方もいます。ただ単に技術や仕事を教えるのではなく、一人ひとりの障がい特性や性格も考慮しながら、相手に合わせて言い方を変えるなど、コミュニケーションの取り方にも気を配るようにしています。
それから、ものづくりの仕事も人と人とのつながりがとても大事だと思っているので、お客様とのつながり、他の事業所とのつながり、一緒に働く人たちとのつながりを意識しています。
ボールづくりをしていると、さまざまな壁にぶつかりますが、事業所によって、つまずくポイントが違うので、「私たちのところではここがうまくいかないのですが、そちらではどのようにしていますか?」と、うまくいっている事業所からアドバイスをもらうこともあります。品質の良いものをつくるためには、そういった情報交換や連携も大事だと思います。
やりがいを感じるのはどんな時ですか?
- 三浦
- 自分たちの作った製品がお客様に届いて「あんなにボロボロだったボールが新品のように生まれ変わってとても嬉しい」という言葉をいただいたり、「再生球を通して道具を大事にするという感動をもらいました。今度は野球を通して自分たちがまわりの人たちに感動を与えたいです」というお手紙をいただいたりすると、本当に嬉しいです。
ボールづくりは糸巻作業がうまくできないと丸い形にならないのですが、最初の頃は全然丸いボールができなかった従業員の方が、日々の作業を積み重ねていくことで、きれいな丸いボールをつくれるようになった時は、とても嬉しいです。「うまくできました!」と持ってきてくれた時の笑顔を見ると、私も「良かったな」と思います。 - 高田
- 私たちが作った野球ボールを納品した高校が甲子園に出たり、活躍したりしているのをテレビやネットで拝見すると「少しでも力になれたのかな」と思って、嬉しいですね。家族にも「この高校のボール、うちで作ったんだよ」と話したり、高校野球の時期は職場のみんなでラジオの野球中継を聞きながら仕事をしています。従業員も、ただボールをつくるのではなく「これは、どこのチームのボール?」と興味を持って作業に取り組んでいます。
今後の目標を教えて下さい。
- 三浦
- 「再生球も新品と変わらなかった」「障がい者の方もこんなに頑張っているんですね」とおっしゃってくださるお客様のご要望とご期待に応えられるよう、さらに技術力を高めていきたいと思っています。
- 高田
- 一緒に働く人たちが楽しく仕事に向かえるような環境づくりを心がけ、今以上に品質の良い製品をつくれるようにみんなで協力していきたいと思います。
ユニオンソーシャルシステム株式会社
弊社は、障がい者の持つ“反復力の高さ”という特長を製品づくりに生かし、きめ細やかな品質管理を行っています。就労支援・職業訓練などの福祉サービスを行いながら、障がい者の能力を引き出すことで質の高いものづくりを実現できている会社は他にないと思いますし、それが弊社の最大の強みでもあります。
また、「家族第一」をモットーに、子育て中でも働きやすい職場づくりを目指して、さまざまな制度や支援策の充実を図っています。現在、管理職の8割が女性で、山形労働局の『えるぼし認定』(女性の活躍推進に関する取組の実施状況が優良である等の一定の要件を満たした場合に受けることができる制度)も受けています。これからも、多くの女性が活躍してくれることを期待しています。
代表者:代表取締役 加藤 翔
所在地:山形県新庄市五日町字清水川1303番地3 ユニオン五日町ビル3F
TEL:0233-29-3651
Eメール:office@unionsocialsystem.com
事業内容:硬式野球ボール製造販売 障がい福祉サービス 障がい児通所支援 等
産業分類 :皮革製品製造
インターンシップ・企業見学の受入れ:通年可